ユタたちは、いずれも身長の低い女性たちである。しかし、神が降りて舞いだすと、急に大きく、猛だけしくなるのだ。次に親神がさ三味線(蛇皮線)を弾き、ユタたちが太鼓を担当すると、エクスタシーは最高潮に達した。これにあわせて、巫女たちがぴょんぴょん跳びはねる。親神は方言でカミグチをつぶやきつづける。狂乱は一時間ほども持続したろうか。子神たち全員が神がかりし、降りた神にしたがって独自の舞いを演じたあと、三味線も太鼓もやみ、終了の祝詞が繰り返された。雰囲気になごやかさが戻る。トランス状態にはいったユタたちが、何ごともなかったかのように談笑をはじめる。「神さんにも夏やすみはあるのかね」と親神が冗談をいうと、笑いが湧きあがる。しかし、恐るべき光景が、その ぐあとにわれわれを見舞った!この祭に呼ばれていた患者が、親神に促されて祭壇の前に出た。浄めの盃を口にしたあと、すすきを握らされた。実は、この患者は49歳だが、もっと高齢にみえるほど健康をそこなっている。病院では治療効果があがらず、思いあまって阿世知さんの門を叩いた。肝硬変に尿毒症の気があり、不運も重なっている。みるからに痛々しく、歩くことさえ億劫そうだったのだ。その人が、すすきを握って祈祷するうち、異様に震えだした。すすきがブルブル震える。間髪をいれず、太鼓が響き、ユタたちに「ハイ、ハイ、ハイ」と急かされると、患者は突如立ちあがり、ものすごい力ですすきを振りながら、六畳間を駆けまわったのだ。
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