元漁師で自然と対話する男神、自然を相手に仕事をしてきた方は、やはり自然 神のことがよくわかるようです。ユタの指導者的存在その関係は親と子の関係に似ている。「水のようにきれいな心、ひねくれとか病気がないように水肌を下さい」といって水を飲む。
海も川も あらゆる生物には魂が宿っている。魂が宿れば、そこには神が宿る。阿世知照信さんは、数少ない男性ユタのひとり。家を訪ねると、2階にある部屋の神棚のかたわらに座り、わたしを迎えてくれた。背後のふすまには、阿世知さん自身におりる神に言われるがままに描いたという、神神の絵がみえます。80歳とは思えないほどの黒黒とした髪を持つ若々しさで、わたしが知っている島人の男性のなかでは、かなり話し好きでもあります。「人間は自然ぜんふ゛の力をもらって生きているでしょ?星、太陽、月、雨の水、海の潮水、山、土地、木って。これってひとつでも欠けたら、人間、もう生きていかれんようになる。だから同じように神の道にも、ぜんぶその力が与えられて来ているわけね。海の神様も火の神様も臨月竜宮の神様も太陽の神様も人助けしなさいって言うの」阿世知さんには7歳頃から神の姿が見えました。19歳の頃、龍郷にある「今井権現」の神様に呼ばれ、山で鏡を掘るように言われました。「鏡を掘っていたときに、お前、神の道を守れ。神社を守れ。って声が聞こえたっちょ。それからあちこちのユタのところに占いにいったら、全部、同じように出たんじゃが。神の道をとれってね。それでも嫌で逃げておったんば」とうとう、神からの障りで妻も自分も病気となり、逃げきれないと観念したのは、30歳代のときでした。それでユタになったといいます。どんな神が乗り降りたのでしょう。/>「ぼくの『与え』(編集部注「神から指名されている」という意味で阿世知さんは使う)は天命大自然神法唱伝となっています。大自然の神としてやっているから森羅万象数べてじゃないのかね」神棚にはいくつかの鏡が飾られています。ほかのユタのところではみられない、自然を模したものが多く目につきます。鏡を固定する木のフレームの下には、夜光貝でつくられた月や星がありました。「『自然に頭を下げることを忘れるなよ』って神から言われますよ。神や仏からはずされても人間は生きていけるけど、自然から外されたら生きていけないでしょ。たとえばね、月は海とひとつなんです。月と海の生命の誕生と死に影響を与えるでしょ。人間は海の満ち潮で生まれて、引き潮のときに死ぬ。自然に合わせて生きてきた人間は、自然に合わせて死ぬんです。太陽と水もまたひとつです。太陽がなければ大地の作物は育たず、雨が降らなければ枯れてしまいます。ともに生物全体に『ありがとう』なんです。これらに対して手を合わせて拝む気持ちが大切なんです。自然に頭を下げることを忘れているのかもしれません。「人が生きていくのに必要な酸素は誰がつくるの?海の波です。島に寄せてくる泡が酸素なんです。島に向かって波は来ます。人間ばかりか、人間を生かす自然を助けるために波がくるんです。黒い魚、アラ(黒めばるの親)って知っている?あのお腹にいっぱい空気が入っているのよ」漁師だった阿世知さんは、話のなかに海で学んだ経験を取り入れて話すのが上手。わかりやすいたとえ話になっています。
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